【2018年12月20日19時:母からの電話④】

 

受話器の向こうから、いつもは静かな実家にたくさんの人が集まっている様子がする。

“警察です。こちらから110番通報がありました。どうしましたか”

“淑子の野郎、電話したな、いやあちょっと女房が我儘ばっかり言うもんだから叩いちゃって、なんでもないんです”と父の声。

「だれかきたっ!」

母は私との通話をそのままにして玄関に向かった。

警察?警察に誰が通報したんだろう?近所の人?見るに見かねて?

近所の人は再三私や兄弟に実家で父が母に暴力を振るっていると連絡してきていた。

「スーパーで怒鳴り続けている」「毎日聞くに堪えない声の怒鳴り声が聞こえる」「炎天下の中、国道をずっと歩かせてる」等など。

そのたびに父に注意はしてきたし、「もうしない」と約束もした。

認知症であり症状が悪化してしまうことも話した。

5年前にガイドブックも渡した。

でも暴力を振るうし、それはエスカレートしていくのだ。

「この次は警察に連絡するから」と、124日、私は静かに父に通告した。

けれど、どうやって警察が来たのだろうか?

私は心臓がバクバクしたまま、「どうせ様子見で帰ってしまうのだろう」と思いつつ、受話器の向こうの会話に集中した。